約束までの時間を有意義に過ごすための独り談話室

離婚されるそうなので一人暮らし準備の為の心構えと今までの回想録(メモワール)

良い本は一生の友になり得る、とゲーテが言った(ような気がした)ので。

秋の頃だったろうか、

小学校2年生の頃、風疹にかかった。

 

辛かったのは初めの一日だけで、

元気だけど夕方には熱が出る。

欠席して2日程経って昼寝から目が覚めると、

母が本を買ってきてくれた。

 

その中の一冊に、偕成社の少女文学シリーズ「君よ知るや南の国」があった。

昼過ぎに読み始めて、夕方には、

気持ちはドイツに行っていた。

(その頃、ワタシの中の世界に「外国とは中国とアメリカ」という意味不明の感覚があった。中国は隣国でもあり、その時の借家が華僑の人が住んでいたという大きな洋風の家で当時では少し珍しかった。アメリカはきっとその頃紹介される文化が何故かすべてアメリカだったように思う。)

 

ドイツという国を舞台に(失意の)青年貴族とジプシーに育てられた可憐な少女の数奇な運命と悲劇。そしてまた続いていく青年貴族の人生・・・

極度なお兄様コンプレックスなワタシは、どハマリし、

その直後提出予定だった読書感想文にこの本の感想を書いた。

鼻息も荒く、意気揚々と先生に提出し、早く皆の前で自分の感想文を発表し、

同級生にもこの素敵な物語を共有したい!!と気持ちを燃えたぎらせていたのだが、

結果は惨憺たるものだった。

先生曰く。

「感想文は素晴らしいと思ったけど、小学校2年生の加藤リンカさん( ワタシ)

にはこのお話は少し早いのではないかしら?」

 

いやいやいや、意味わからん。

 

だって、偕成社の文学シリーズだよ?

ワタシのような少女(当時)のために編集されたものでしょ?

早いってなにが?

ミニヨン(もう一人の主人公)が主人公の年上青年貴族のヴィルヘルムに淡い恋心を抱いてしまうこと?

やたらとヴィルヘルムの周辺では女の匂いがすること?

物語を読むのに早いも遅いもあるものかね。

その一言でワタシはその担任女性教師が嫌いになってしまった。(非道い子供だった)

 

そこから少しずつドイツというものにアンテナを伸ばすことにした。

バウムクーヘンは実はドイツのお菓子だとか、

アルバイトとは実はドイツ語なのだとか、

グリム童話はドイツ民話から編纂されたものだとか、

昔日本はドイツと同盟国だったとか、

現在、ドイツは西と東に分かれているだとか(その頃の”現在”です。ワタシが小学生の頃はドイツは東西に分かれ、台湾は地図上で「中華民国」でした)、

ネットのなかった時代なので、それこそ本で調べるしかなく、

ドイツ熱、ゲーテ熱というちらちらと小さな青い炎が消えぬよう、

懸命に自分の心に読書という薪をくべながら、

まるでオリンピック聖火が消えぬように、

大事にその火を保ち続けた。

 

長じて、夫の赴任先のドイツに行き、

ワタシはやっとミニヨンの感じたドイツの足元の凍るほどの「寒さ」を肌で感じ、

彼らの恋い焦がれた「南の国」イタリアのレモンとオレンジの香りと風、灼熱の太陽も感じることが出来た。

ミニヨンが過ごしたロマ(ジプシー)のキャラバンの、

欧州中を自由に渡り歩く様を見て、

ヴィルヘルムが泊まったような古いけど大きな構えのしっかりした南ドイツのホテルのご飯の美味しさに心震えた。

 

本は本物をも越えて、ワタシに夢を見続ける心の糧を与えてくれた。

 一冊の本がくれた夢の一滴が、からだの隅々に美しい波紋となってまだ見ぬ世界を教えてくれたような気がした。

 そんな夢見がちな、極東の片隅でうだつのあがらない、離婚問題を抱えるようになったオバサンと化した現在のワタシでも、

 

そうして本の中では、

何一つ縛られるものもなく

自由にネバーランドに往復するために空も飛ぶし、

国鉄総裁の殺人事件を追い求めるジャーナリストにもなり、

霧のたち込める街の妖しくきらめくガス灯の下で、探偵の助手も務められる。

 

But alas,I have no time for reading now....

 

f:id:katrinka:20181014124405j:plain

f:id:katrinka:20181014152630j:plain