約束までの時間を有意義に過ごすための独り談話室

離婚されるそうなので一人暮らし準備の為の心構えと今までの回想録(メモワール)

この男は、家族の中の何色の羊なんだろうか

家族の中の黒い羊、とはワタシのような者だ。 

Black sheepというのは、その家の厄介者やのけ者、変わり者のことを指す。

兄弟姉妹の真ん中に生まれたワタシは、程よく適当に両親からも干渉されず好き勝手に育った。

ワタシが自分を黒い羊だ、と初めて思ったのは食事の好みで、

ワタシ一人だけが肉が食べられない。

ワタシは空気が読めない。

ワタシは体制に対して反抗的だ。

ワタシは家族と一定の距離を保てる方が好きだ。

ワタシは兄弟で一人だけ猫好きだ。

 

それでも家族は、こんなワタシを愛してくれた。

黒くとも、毛がモジャモジャでも、一人でふらりと牧場(家)から離れて一年近く連絡を入れなくとも、好き嫌いがあっても、家族は常にワタシを赦してくれた。

 

バカ夫の家は、ワタシの実家とは対照的だ。

連絡は1ヶ月以上しないと不思議がられ、

好き嫌いは断罪され、

体制(義父)に反抗的なことは許されない。

 

バカ夫のモラハラは、実はこの義父からの遺伝?なのかと思うほど言動が似ている。

義母はそこそこハッキリ物を言う人だが、それでも我慢して一歩下がることが妻としての美徳だと思っているカンブリア紀の人間なので、それが家庭の平和を築くと信じてやってきた。

だが、ワタシに言わせるとそれこそが仇になって、いまこうしてワタシが苦しむ事になっている。

モラハラは、連鎖する。

モラハラを間近で見てきた子供は、良いか悪いかの判断よりも先に、その空気に慣れていく。それが当たり前になっていくのだ。

 

ロンドンにいる頃、下の子はたびたび担任の先生に注意された。

聞くと、同級生に対し暴言とも言える言葉を吐いていた。

勉強の少し遅れている子に対し、「は?こんなのも分かんないの?やる意味なくね?死ねよ。」

騒がしい子に対し、「騒ぐんなら出てけよ。居る意味ねえし。てか、オマエいらねぇし。」

 

これらは小学中学年だった下の子が実際言った言葉だ。

先生の聞き取り調査から、本人も認めた。

ワタシは愕然とした。

すべて、ワタシがバカ夫に言われていた言葉だったからだ。

涙よりも、恐怖で震えた。

先生や当事者の親に謝罪し、そこから下の子に向きあった。

(お母さんは、あなたがお友達に言ってた言葉が大嫌いです。

人に対して言いたい事がある時、口にする前に本当にその言葉で合っているのか、その言葉で傷つく事はないか考えよう。

一人で出来ないなら、お母さんも一緒に考える。あなたが誰かを傷つける度に、それはお母さんに全部返ってくるナイフみたいなものだと思って欲しい。

いつもお父さんがお母さんに言っていること、お母さんは正直に言うと大嫌いだよ。だから、お母さんはこれからその言葉と戦う。

お願いだから、あなたも正しい言葉が見つかるまで戦ってほしい。)

そんなふうに話した。

 

もう8年ほどまえの話だが、下の子は今、勉強は出来なくても、誰にでも優しいと言われる子になった。

お勉強がそこそこ出来たから私立中学に入ったあの頃の彼よりも、今、友人を大事にして、彼女を大事にしている優しい彼の方が、本人の魅力を引き出している。

 

バカ夫は、そんな機会がなかった可愛そうな羊だったのだろうか。

両親は仕事で忙しく、彼を顧みることがなかったという。

(でも、アイツは根性が違う。何でも自分で考えて、何でも自分で出来た。俺達とは何か違う、出来の良さだ。)

義父はいつだって手放しでバカ夫を褒め称えるが、何故かワタシにはそれがとても薄っぺらく、表面的に「良い子」あるいは彼の持つ「要領のよさ」だけを褒めて、認めているように感じた。そこには彼の本質を見つめようとする親のまなざしではなく、他人の中でいかに上手く立ち回れる人間としての度量を測っているかのような、冷たい感じがするのだ。

 

実の兄弟からは「一番嫌いなタイプ」と言われ、

実の親からは「本当は優しい子」(では、普段はそうじゃないと認めているのか?)と言われ、

実の息子からは「話を聞かないから話したくない」と言われる。

 

血を分けたそれぞれの人間から、なにひとつ関連がつけられないワタシの夫は、はたしてあの家族の中で、生きづらい羊だったのか、それとも家族の中に必ず一人いるという、悪魔だったのか。

 

ワタシに離婚届を渡しておきながら、平然と近所の人間と談笑し、子供にはご飯時にワタシの悪態をつき、両親には優しい世話好きな息子で、会社では仕事が出来る優しい上司、でも兄弟間では嫌悪とも言える感情が渦巻いている、なんだか同じ人間を見ている気がしないのだ。

 

黒い羊のワタシが言うのも変だが、

何色かわからない羊には、要注意なのかも知れない。