北総ロザリオ文芸部

タイトル一新です。離婚(予定)後の自由満喫と今までの回想録(メモワール)

SchwartzWald( 黒い森)のカッコウ時計

数年前までドイツにいた。

上の子が高校入学とともに帰国する予定で、夫の会社からも滞在期間は2年と決められていたので、ワタシは自分に悔いのないよう、楽しめることは楽しもう、と思った。

帰国したら働きに出るつもりだったし、どうせならドイツでしか出来ない事がしたくてVHS(市民学校)に通い、ドイツ語を習い、同級生に誘われるまま一緒にカフェに行き、買い物に行き、お酒を飲みに行った。かと言ってそこは駐在妻、基本はメイド生活だったが、(ロンドンでは奥様生活をしていると日本では思われていたみたいだけども、実際は家族のための家政婦兼運転手だった。ワタシだけでなく、ほとんどの奥様が生活水準の差に関わらず、そういう生活を余儀なくされた。)得をしたのはやはり旅行だろうか。

なにせドイツにいれば特急でフランスやチェコへ、車でオランダへ、とヨーロッパ中に向かって伸びるアウトバーン(高速道路)があるので、どこへ行くのもOK。国によっては通行料も取られるけれど、5000円ほどではなかったか。

ドイツにいる間に出来る事として、私達は初めての夏に車でイタリアに行く旅行に出た。

フランスに入り、そこからスイス、アルプスを超えてイタリアのヴェニスに。そこからまたアルプスを超えてドイツに入る、という行程を約1週間でこなす。

実はこれ、その時夫の上司が貸してくださった「水曜どうでしょう」のDVDを観て触発された夫がその弾丸ドライブツアーの真似がしたかったので計画した。(ドイツ語の宿題が多くてワタシは旅行に行く前にそのDVDを観ていなかった為、先入観がなくある意味よかった)

その際、フランスのアルザスに入る手前のドイツの黒い森に立ち寄った。カッコウ時計が欲しかったからだ。

ドイツにいた、という証拠みたいなものが欲しくて、ワタシは夫にカッコウ時計が欲しい、と言ったと思う。夫もその時は了承してくれ、私たちはカッコウ時計のふるさとに立ち寄ったのだが・・・

 

驚くほど高価い。

少しデザインが凝っていて、イイなと思う顔くらいの大きさのカッコウ時計でも、10万近くする。欧州の童話なぞに装丁される森の精霊のような葉っぱの覆う顔のような、いかにもな装飾のされた素敵なカッコウ時計になるともう手が出ない。

その頃、別段お金がなかった訳ではなかった。むしろワタシは学校通いしかしていなかったのでお金は全然使わなかったが、あまりにお金を使わない移民達と付き合っていたおかげですっかりお金の使わない生活になっていた為、数万円のカッコウ時計すら買うのを躊躇ってしまった。

夫はそもそも高価な買い物を快く思わない人なので、ワタシに無理に買えとは言わない。

ワタシは、ワタシなりにこう思うようにした。

「次にもう一度来た時に、絶対買う。」

そう言い聞かせ、後ろ髪ひかれながら黒い森を抜け、フランスに向かったのだけが、今の大後悔につながっている。

もはやこの歳で、離婚を目の前にしてなんとか生活しているワタシにとっては、

すでにドイツに行くなぞとは到底あり得ない事で、どうしたってカッコウ時計が手に入れられる状況ではないのだから、つい先日、夢で黒い森を車で走る思い出の夢を見た時に、

「しまった!カッコウ時計を忘れてた!!」と

目が覚めた時に悔しい思いをしたのだ。

それがなくとも生活は出来るのだけれど、

それがないのは、だいぶ淋しい。

 

いい歳したオバサンの、稚い欲の話。

 

 

 

 

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日本でも通販で買えるけど、やっぱり黒い森に行きたい